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アクティブインサレーションの大本命|MHW「コアアロイジャケット」登場
各社から多彩なアクティブインサレーションが登場するなかで、ひときわ存在感を放っているのが、マウンテンハードウェア(MHW)の「KOR(コア)シリーズ」です。3種の高機能素材を巧みに組み合わせたラインナップで、秋冬から春先の山行に求められる快適性を徹底的に追求しています。
なかでも昨年登場し、通気性と確かな保温性を両立するバランス型モデルとして高い評価を集めているのが「コアアロイ」。今季は待望のジャケットモデルが新たに加わり、よりオールラウンドに使える一着へと進化しました。本記事ではその魅力をあらためてひも解き、シーン別のレイヤリングもあわせて紹介します。
目次
3つの高機能素材を組み合わせた快適インサレーション、コアシリーズとは?
通気性を重視した動的保温着、アクティブインサレーション。その使い勝手のよさから、近年フリースに並ぶミドルレイヤーの定番として確固たるポジションを築いている。
ただアクティブインサレーションと一口にいっても、ナイロンシェルで化繊中綿を覆うものから中綿が剥き出しのもの、中綿と表地が一体化したものまで種類はさまざまだ。各社から多くのモデルが登場するなか、自分に合った一枚を選ぶのが難しいという声も少なくない。
そのなかで、登場以来ユーザーから高い支持を集めているのが、マウンテンハードウェアの「KOR(コア)」シリーズである。ここでは新作「コアアロイジャケット」を紹介する前に、まずシリーズの特徴を整理しておきたい。
表地は防風性と耐久性を持つPERTEX® QUANTUM AIR

コアシリーズには保温力に応じて「コアエアシェルウォーム」、「コアアロイジャケット」、「コアステイシス」の3モデルがラインナップされている。

まず特筆すべきは、これら3モデルすべての表地にPERTEX ® QUANTUM AIRを採用している点だ。20デニールの極細糸を高密度に織った生地は、軽量でありながら引き裂き強度にも優れ、防風性と通気性を同時に確保する。一般的なナイロンシェルよりも快適で、行動時のストレスが少ない特徴を持つ。

PERTEX ® QUANTUM AIRの概念図。20デニールの極細糸を高密度に織っており、優れた引き裂き強度を誇る。通気性と防風性という相反する性質を両立し、軽い雨をしのぐ撥水性やストレッチ性も備える
2つの中綿を駆使した“ちょうどいい”暖かさ
コアシリーズのもうひとつの特徴は、モデルや部位ごとにOcta®とPrimaloft® Gold Activeの2種類の中綿を最適に使い分けている点にある。なお、それぞれの素材の特性は以下の通りだ。
Octa®
帝人フロンティアが開発した保温素材。中が空洞となった中空糸に8本の突起を持つタコ足型の断面が特徴で、軽量性、嵩高性、保温性、吸汗速乾性を兼ね備える。

Octa ®の断面図。8本の突起をもつ中空糸が毛細血管のように絡まることで、優れた保温・通気・速乾性を発揮する
Primaloft® Gold Active
化繊中綿の最高峰のひとつとされるPrimaloft®シリーズの中でも、耐湿性と保温力に優れ、動きへの追従性や通気性の高さが特徴。濡れても保温性を維持し、行動中の熱や湿気を効率よく逃がす。
これら2種類の中綿を、「通気性や吸湿性を重視する場合にOcta®、保温性を優先する場合はPrimaloft® Gold Active」というように配置することで、モデルごとの個性を生み出している。

ダウンに匹敵する軽さと保温力を備えるPrimaloft® Gold Active。ダウンのデメリットである水濡れにも強く、水に濡れた状態でも98%の保温力をキープする
コアシリーズでもっとも行動性を重視した「コアエアシェルウォーム」は PERTEX® QUANTUM AIR × Octa® の組み合わせで、軽さと通気性を最優先した構成。一方、シリーズでもっとも保温性の高い「コアステイシス」は、Primaloft® Gold Active を部位別に適量配置し、寒さに強いモデルとなっている。
そしてその中間に位置する「コアアロイ」は、保温性と活動性のバランスに優れたモデルだ。表地にはPERTEX® QUANTUM AIR、背面には通気性の高い Octa®、前身頃と衿部分には Primaloft® Gold Active を封入し、まさにちょうどいい暖かさを実現している。
こうした高機能素材を使った緻密なマッピング(素材の使い分け)は他社製品ではあまり見られず、アクティブインサレーション市場におけるコアシリーズの独自性と高い支持につながっている。
使い勝手抜群!迷ったら「コアアロイジャケット」が正解

左からコアアロイクルー¥29,700、コアアロイジャケット¥34,100、コアアロイタイツ¥20,900
シリーズのなかでも昨年もっとも反響が大きかったのが「コアアロイ」である。ここでは、その魅力をさらに詳しく見ていきたい。
上述の通り、「コアアロイ」はPERTEX ® QUANTUM AIR、Octa ®、Primaloft® Gold Activeの3つの素材を効果的に組み合わせている。行動中の快適性を保つため、素材の配置や中綿量の調整は非常に細やかだ。

とくに中綿のマッピングはよく考えられており、冷えを感じやすい首元をカバーするために衿部分に80g、前身頃や袖には40gのPrimaloft® Gold Activeのシートを封入。逆に汗をかきやすい脇下には中綿を入れないことで、保温とオーバーヒート防止の両立を実現している。

背面はバックパックによる蒸れを抑えるため、高通気のメッシュ状の Octa® を使用。このメッシュ状のOcta ®=「Octa ® CPCP」は、今季マウンテンハードウェアのみで展開される次世代仕様で、従来より耐久性が増しているうえに業界で唯一の消臭機能も備えている。

さらに背面の表地を見てみると、背中から袖にかけて生地が切り替わっている。じつは、2種類のPERTEX ® QUANTUM AIRを使用しているのだ。

前身頃から肩にかけてはPU(ポリウレタン)コーティングを施し、バックパックによる擦れを軽減。一方、背面や脇下など発汗量の多い部分には、より通気性のいい生地を使用している。
このように「コアアロイシリーズ」は3つの素材の特性を最大限に生かしながら、中綿・表地の双方で緻密なマッピングを行うことで快適性の最大化を実現。シリーズのなかでもとりわけ保温性と活動性のバランスがよく、レイヤリングが苦手な人や寒がりで暑がりという体温調整がしづらい体質の人も使いやすくなっている。

バックパックに収めやすいポケッタブル仕様
重さに関してはメンズのクルータイプ(M)が290g、ジャケット(M)が262gと、決して超軽量ではないが、そのぶん耐久性の高さが頼もしい。
紅葉シーズンから冬の低山、小屋泊、そして春先まで長く使え(標高の高い夏山でのお守りとして携行するのも有効だ)、ロングハイクからファストパッキングまで幅広いシーンにも柔軟に対応。登山スタイルを問わず選びやすいモデルとなっている。
ジャケットタイプが追加され、より使いやすくなった

従来のプルオーバータイプの「コアアロイクルー」は登山口までのアプローチウェアや下山後の街着としても使いやすいデザインが好評だったが、着脱のしやすさを求める声も寄せられていた。
そうしたニーズに応える形で、今回新たにジャケットがラインナップに加わった。フルジップにより着脱が容易になっただけでなく、行動中の細やかな体温調整もしやすくなっている。

メンズ着用(Mサイズ、身長183㎝)
ミドルレイヤーとしてもアウターとしても扱いやすく、レイヤリングの幅が広がった点も見逃せない。アスリートの間でも、その使い勝手のよさが好評だ。
MHW製品を山で使うことが多い登山ガイドの伊藤 伴さんも「細身のシルエットゆえにシェルの下に着てもゴワつかず、ジャケット型だからファスナーによる体温調整も容易になった。さっそく晩秋の南アルプス(標高2400m、気温2℃)で使用しましたが、とても快適に過ごせました。レイヤリング次第で、晩秋から春先まで長いシーズン重宝しそうです」と太鼓判を押す。
ジャケット化によって、「コアアロイ」はより行動着として扱いやすくなり、これまで以上に幅広い登山スタイルにフィットする一着へと進化したのである。

ウィメンズ着用(Mサイズ、身長162㎝)
スタイルの参考に。シーン別レイヤリングガイド
では実際に、「コアアロイジャケット」はどのようなシーンでどのように使うとよいのだろうか。着用イメージが湧きやすいよう、3つのシーン別にレイヤリング例を紹介していこう。
冬の日帰り低山ハイク

レインジャケット/コヒージョンジャケット¥36,300、ミドルレイヤー/コアアロイジャケット¥34,100、ベースレイヤー/エアメッシュロングスリーブクルー¥12,100、パンツ/ダブルドラゴンアルパインパンツ¥22,000、キャップ/ポーラテックハイロフトキャップ¥6,600、グローブ/コアステイシスグローブ¥11,000、バックパック/リックティスプリット20Lバックパック¥19,800
<レイヤリング例>
ベースレイヤー+コアアロイジャケット+レインジャケット
スタート時は寒い一方で、登り始めると汗をかきやすく、立ち止まれば冷えを感じやすいのが冬の低山だ。こうした寒暖差が大きい場面でも、「コアアロイジャケット」なら汗がこもりにくく、休憩時にはしっかり暖かい。ファスナーを使った微調整が容易なため、アウターとして行動しても着脱の回数が少なく、スムーズに歩き続けられる。
冬山小屋泊の山行

ハードシェル/スノーストームジャケット¥57,200、ミドルレイヤー/コアアロイジャケット¥34,100、ベースレイヤー/エアメッシュロングスリーブクルー¥12,100、パンツ(シェルパンツの下に着用)/コアアロイタイツ¥20,900、シェルパンツ/スノーストームパンツ¥56,100、帽子/ハイキャンプビーニー¥3,960、ポーラテックハイロフトバラクラバ¥6,600、グローブ/オールトラックスゴアテックスグローブ¥14,850
<レイヤリング例>
行動中:ベースレイヤー+コアアロイジャケット+ハードシェル
コアアロイタイツ+シェルパンツ
夜明け前から夕方まで活動が続く一泊の山行では、気温差が日帰り以上に大きくなる。「コアアロイジャケット」は、こうした長い行動時間の体温調整を一着でこなしやすい。保温着としては軽めだが、シェルを羽織れば風の強い稜線でも十分な暖かさを確保できる。

ミドルレイヤー/コアアロイジャケット¥34,100、ベースレイヤー/エアメッシュロングスリーブクルー¥12,100、パンツ/コアアロイタイツ¥20,900
<レイヤリング例>
小屋内:ベースレイヤー+コアアロイジャケット+コアアロイタイツ
また、小屋内が冷えるのはよくあることで、「コアアロイジャケット」は小屋内の保温着兼リラックスウェアとしても使いやすい。「コアアロイタイツ」と組み合わせれば、行動中から小屋内までスムーズに使い回せる。シンプルなデザインのため、下山後の街着として使うのもアリだ。
ゲレンデスキー/サイドカントリー

スノージャケット/バウンダリーリッジゴアテックス ジャケット¥80,300、ビブ/バウンダリーリッジゴアテックス ビブ¥75,900、ミドルレイヤー/コアアロイジャケット¥34,100、ベースレイヤー/エアメッシュロングスリーブクルー¥12,100、パンツ(ビブの下に着用)/コアアロイタイツ¥20,900、帽子/ハイキャンプビーニー¥3,960、グローブ/¥14,850
<レイヤリング例>
ベースレイヤー+コアアロイジャケット+ビブ+コアアロイタイツ+スノージャケット
「コアアロイジャケット」は、登山だけでなくゲレンデスキーやサイドカントリーのレイヤリングにもうってつけだ。滑走時の暑さとリフト乗車中の冷えに対応しつつ、軽量でしなやかな着心地で滑走の動作もストレスフリー。さらに発熱しやすい前腿にOcta®、リフトで冷えを感じやすい膝と臀部にPrimaloft® Gold Activeを配置した「コアアロイタイツ」とセットアップで着用すれば、快適なコンディションを保ちながら一日を楽しむことができる。
自分にピッタリを。コア シリーズの選び方
幅広いシーンで使えるオールラウンドな一着ゆえに、迷った際は「コアアロイジャケット」を選べばまず間違いないだろう。ただし、使用したいシーンやスタイル、体質が明確な場合は、それに応じて他モデルを選ぶことで、より快適な山行が実現する。ここでは、コアシリーズ3モデルの選び方を紹介する。
高強度なアクティビティ・汗をかきやすい人は「コアエアシェルウォーム」シリーズ

通気性と軽量性を最優先した「コアエアシェルウォーム」はファストハイク、スピードハイク、バックカントリーのアプローチ、トレイルランニングなど、高強度で動き続けるシーン向き。また暑がり、汗かきで「秋冬でも保温は最低限でよい」という人にも相性がよい。
守備範囲の広さが光る。一般的な秋冬の山行には「コアアロイジャケット」

通気性と保温性のバランスがシリーズ随一で、暑がりで寒がりといった体質もカバーする。冬の低山や春先の日帰りハイク、冬山小屋泊など多くの登山者の日常的な山行に寄り添うモデルである。また登山だけでなく、スキーやスノーボードなどゲレンデスポーツにも重宝する。
秋のテント泊や厳冬期登山、寒がりの人は「コアステイシス」

寒がりな人には、3モデルの中でもっとも保温性の高い「コアステイシス」が安心だ。ダウンに匹敵する暖かさを備え、秋のテント泊や、厳冬期の低山をゆっくり歩くシーンなど、厳しい寒さや長時間の停滞で真価を発揮する。
また、ダウンと異なり濡れに強く、耐久性にも優れるため、アイスクライミングのようなハードな環境でも使いやすい。
詳しくはこちらの記事をチェック:「マウンテンハードウェア|アクティブインサレーションはどう着るのが正解?」
コアアロイジャケットで冬の山をもっと快適に

「コアアロイジャケット」上/メンズ・カラー430、中央右/メンズ・カラー379、中央左/ウィメンズ・カラー010、下/ウィメンズ・カラー460
行動中と停滞時のどちらにも過不足なく対応できる「コアアロイジャケット」は、万能型のアクティブインサレーションだ。従来のプルオーバーに加えジャケットタイプが登場したことで、体温調整のしやすさが一段と向上し、ミドルレイヤーにもアウターにも使える柔軟性を備えた。
汗冷えを抑えつつ冷たい風を防ぎ、必要な場面ではしっかり暖かい。こうした“ちょうどいい快適さ”は、冬山初心者から中級者まで、幅広い登山者の安心感につながるはずだ。冬の山行をより自由にしてくれる一着として、「コアアロイジャケット」は心強い味方となるだろう。
写真:村本祥一
原稿:平野美紀子
協力:コロンビアスポーツウェアジャパン
編集・ライター
平野美紀子
セレクトショップの広報からメンズファッション誌の編集者に転身。2021年に独立し、現在はライフスタイルやファッション、アウトドアなどさまざまなメディアやブランドコンテンツの編集、執筆を行う。趣味は登山・スノーボード。山好きが高じて、2023年は北アルプス・黒部五郎小舎のスタッフとして一夏を過ごした。編集ライターとして活動する傍ら、ドライヘッドマッサージのセラピストとしてサロンワークにも勤しむ。
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